たまにはこんな日












放課後、窓際の席から憂鬱そうに外の景色を見ている美しい男子。
わざと女子が教室に残りチラチラ見ているが誰も近寄れない。そんな中、
さりげなくというには少々無理のあるぎこちない歩きで男が近づいた。


「よう。隣いいか」
「好きにしたら」


二色は特に相手をみる事無く何時も通り適当に返事する。
窓際で外からは運動部の盛んな声が響いていた。暑苦しい。
後ろに座った男も中々暑苦しいが視界に入ってないだけマシ。


「…お前、進路とか決めた?」
「まあね」
「お前なら頭いいし器用だし何処でも行けるよな」
「何?気持ち悪い」
「素直に褒めたんだよ」
「ありがとう」
「え」
「素直にお礼を言っただけ」
「あ、ああ。そうか。そうだよな。はは」


バンドの話と喧嘩するときは威勢がいいしポンポン言葉が出てくるのに
いざ真面目に2人で話をすると案外行き詰るということに最近気づいた。
野朗同士そんなベタベタと話す事もないしそれはとても気持ちがわるい。
これでいいと思いつつ。でも諒太郎はさりげなく外を眺めている二色を見た。


「何か用?じろじろ見るのやめてくれない?すげえ気色悪い」


性格はこれ以上無いほどに悪いが悔しいけれど顔立ちは目が覚めるほど美しく。
それは横顔でも良く分かる。自分は男なのに。ちゃんと見るとそれを意識する。
そしてささらもやっぱりこういうのがいいのだろうかと軽い嫉妬もしてみたりして。
女子がまたコソコソと何やら話をしているが2人にはどうでもいい事。


「あー…なんつかさ、今度、ライブでも行かないか」
「はあ?」
「ボーカルがすげえ良いって評判のとこでさ。いい刺激になるんじゃねえかと」
「まあ、いいけど。そのまま数合わせの合コンに流れ込むとかは無しね?」
「ねえよ。じゃあ日にちとかはまたメールするわ。誘ったし全部俺持つから」
「お前なんかに奢られたら後で何言われるか分からないし。いいよ折半で」
「そっか。ま、お前がいいならそれでいいや」


相変わらず振り返らない二色だが見つめられても困るのでそれでいい。


「かなめさんと仲良くしてとかもう喧嘩しないでとか泣きつかれた?」
「ん?ああ。それは毎日言われてる。今のはただ誘いたかっただけ。なんなら他の2人も誘うけど?」
「いい。彼女はふわふわしてるから分からないんだよね。男同士仲良くたって気持ち悪いだけだだって。
それに、この場合仲いいほうがきっとドロドロするしえげつない事になると思うよ」
「まあ、な」


同じ女の子を好きになっているのだから。仲良しでなんか本当は居られない。
他の男たちとだって内面はライバル心むきだしの危うい均衡状態。その1歩が出ないのは
そんな崩壊を彼女が何よりも悲しみ苦しみ恐れているから。誰も彼女を泣かせたくはない。


「お前ってつくづく変」
「自覚はしてる」
「……でも羨ましい。…少しだけ」
「ん?」
「俺帰るけど。お前どうする」
「ささらにはフラれたし一緒に帰ろうじゃないか。なあ」
「痛いな。殴るなよ蹴り返すぞ」


何時もの調子でバシバシと肩を叩いたら本気で跳ね除けられた。
それでも蹴ってくる気配は無い。結局カバンを手に教室を出る。
それに合わせて女子の視線も動いていた。なんだか玩具みたい。
諒太郎は何時もの調子で笑って手を振ったが二色は無視をした。


「お兄ちゃん」
「あれ。お前、岡部と帰ったんじゃなかったのか」


下駄箱まで降りてくると何故か入ってくるささら。


「途中まで帰ったんだけど忘れ物してて」
「じゃあ待ってるから一緒に帰ろう」
「いいの?2人で帰るんじゃ」
「いいから。行ってこい」
「うん」


まさか戻ってくるなんて。靴を履き替えて階段を上がっていくささら。
何も言わなかったが二色も同意しているのだろう大人しく待っている。
途中買い食いでもしていこうか。それともまっすぐに帰ろうか。
諒太郎が考えていると二色も何か考えている様子で。


「何だよ」
「…うん」
「今日くらいはこのまま大人しくして喧嘩はやめとこう。あいつもその方が喜ぶし」
「それなんだけどさ」
「あ?」


ささらが教室においてきたものをカバンに入れて玄関に戻ると
ちょっと嬉しそうな顔の二色と複雑な表情の兄が待ってくれていた。
一瞬また喧嘩をしたのかと心配したが怪我などはなく片方はご機嫌。
何かあったのだろうかと恐る恐る近づいた。


「お、お兄ちゃん…?かなめさん…?」
「さ。帰ろうかささらちゃん」


今まで散々色んな目にあってきたささらは本能で何かを察したのか
不安そうな顔をして兄を見つめる。そしたら見事に逸らされた。
これはもう不安的中。絶対にこれは酷い目に合うパターンだ。主に体が。


「…お兄ちゃん」
「ささら、あの」
「今日は全然喧嘩してないね。仲いいね。いい事あったのかな」
「え?あ。ああ。たまにはこんな日もあるって」
「うん」


恐れながらもでも何時もと違う雰囲気を感じ取り何処か嬉しそうなささら。
顔を合わせれば罵声を浴びせ殴り合い蹴あう2人が普通に歩いている。
それだけでも大きな進歩というか変化というか。とにかくいいことだ。


「俺の部屋でいい?」
「ダメです」
「ダメ?」
「白雪君居るから」
「じゃあ適当に良さそうな所みつけようか」
「そうしましょ」


腹を括ったのかささらはもううろたえることはなく普通に返事する。
結局隠れやすそうなホテルを見つけ中へ入る。二色とささらと諒太郎。
3人そろって制服姿。もしも誰かに見られたら何もいいわけ出来ない。
見た所で他人には何も分からないだろうが。


「ド変態一直線だぜ…」
「お兄ちゃん行くよ」
「あ、ああ」


初めてじゃないのに久しぶりすぎてやっぱりドキドキする諒太郎。
無事に部屋に入るまではずっと複雑な気持ちを抱えていた。


「先にシャワー浴びたいから2人はここで待機」
「俺も一緒でいいよ?」
「待機!」
「はいはい」


制服を脱いで先にシャワーを浴びたいというささら。今日は体育があったし女子としては綺麗にしておきたい。
じゃないと後々危なっかしい事になりかねないので。とは口にしなかった。
暫く彼女がシャワーを浴びるのを待って。それから男たちも間を空けてシャワーを浴びた。
3人一緒の風呂は男同士がくっ付きすぎるので気持ち悪くて却下となる。


「…恥かしいから電気消してください」


タオルを巻いた状態でベッドに座るささら。その後ろに諒太郎。
二色は部屋の電気を消してから彼女の正面へと移動する。
無意識なのか左手は既に兄としっかり握り合っていて。空いた手は胸を隠す。
そんな彼女を見つめていた二色だがゆっくりと顔を近づけ優しいキスをする。


「これ取るね」


そして彼女の体を隠していたタオルをそっと体から奪う。
多少暗くても目が慣れればやはり見える。恥かしそうにするささら。
その白い体を後ろから抱きしめる諒太郎。二色も手を伸ばした。


「…あ…あ」


強張るささらの体をほぐすようにまずは優しく体を撫でながらキスを落とす。手や首筋鎖骨肩に腕、
足先もしっかりと。満遍なく。部屋はキスの吸い付く音と布の擦れる音、そしてささらの甘い吐息。
後ろと正面からの優しい愛撫に恥かしそうにしながらも刺激に悶える彼女の首筋にキスする諒太郎。
その反対側に顔を近づけ耳を攻めながら時折甘噛みする二色。


「イイ顔してる。ほんと、君は可愛いんだ。今日は2人居るし労わってじっくりしようね」
「…なんだろ…あんまり嬉しいせりふじゃないような…」
「君が欲しい物を与えられるといいな。俺じゃ不完全でも、…ね」
「かなめさん」
「好きだよ」


耳元で囁かれる彼の甘く艶っぽい声は凶器でしかない。すっかり顔を真っ赤にさせるささら。
二色は少し微笑んで唇を軽く奪うと体をいったん下げて今度は下半身へと移動させる。
何をされるか分かっているのに逃げる事はせずされるがままに股を開いた。
その足を兄が後ろから掴んで固定する。二色にすべて曝け出す恥かしいポーズ。
もちろん自分でも見えるし後ろの彼にも見えているのだろうが。


「あっ…ぅんんっ」


ささらの開かれたソコに顔を埋め生ぬるい舌が意地悪く動き出す。
すぐにはイカせないようにわざと優しいゆっくりとした刺激。


「ささら。口あけて」


悶えていると諒太郎に頬を持たれて彼の方へ向かされる。
そのまま言われたように口をあけるとキスとともに舌が入る。口内で絡まる舌。
下半身を攻める二色の頭を押さえつつあいたほうの手は諒太郎と握り合うままで。


「…ん…ん……はあ…ぁあ」
「……んなたまんねぇ顔すんなって…もっと…シたくなるだろ」
「ん…あっ」
「胸とかさ。攻めるとほんといい顔すんだよな」


回数自体は何時もに比べればだいぶ少ない。あっけないと思うくらい。
だけどささらは動けなかった。2人の男に挟まれてそのまま夜まで寝るくらい。
ただ何時ものように全身に激痛とかアソコが痛いとかはない。本当に労わってくれた。
それが普通なんだよなと覚醒してから冷静になって思う。


「お兄ちゃんおなかすいた」
「俺も。帰ったらすぐ飯だ」
「今日はかなめさんも一緒に食べましょう!ね!」
「嬉しいけど、白雪が待ってるし」
「あ。そっか。残念」


着替えを済ませホテルを出る頃は真っ暗で諒太郎は先に親に連絡した。
二色もささらも一緒だといえばある程度許容範囲な親である。
さすがに3人でホテルでしたなんていえば恐ろしい事になるだろうけど。


「こっちこそ今日は行き成り誘ってごめんね、おなかすいたのに」
「ううん。今日はなんだか2人とも優しいから。嬉しかった」
「そっか。でも、俺こいつ死ねばいいと思ってるから。割と本気で」
「上等だ俺もお前なんか犬と一緒に侘しく生きて行けばいいと思ってるよ」
「やーめーて!おなか空いてるから力もでないの!2人とも大人しく帰ろう!」
「はーい」
「へいへい」


おわり

戻る

inserted by FC2 system