「可愛いよ、さらちゃん」
次の日、咲良は支給された学校の制服を披露した。
エリサのお古ではない、きちんと咲良の為に用意されたものだ。
可愛い白のブレザーで赤いリボン。スカートが赤茶のチェック。
小柄な咲良には少しブカブカしているが、気にしない。
「でも、特待生って制服や靴に鞄ももらえるの?お金…返さなくていいの?」
「気にしないでいいんだよ」
「咲良、今日は洋服を買いに行こう」
「いや、まずは靴だよ」
「アクセサリーもいいよな」
「お、お兄ちゃん達、…さら、今のままでいいよっ」
制服姿に気を良くしたのか今度は別のものを買おうとあれこれ相談しはじめる。
気持ちは嬉しいけれど咲良にはそんなお金はないし困る。
誰が何を買うか、何を優先させるか。
まるで喧嘩みたいな険悪な空気になりながら結局みんなで行こうという話になり
咲良を中心に異様に目立つ兄たちと街に出た。
雑誌の表紙を飾るモデルのような目立つ美しい容姿は日本でも当然注目を浴びる。
そんな兄たちの真ん中にポツンと痩せ細った小さい少女が1人。
キョロキョロ周りを気にしつつ不安そうに歩いている。時々転びそうになって助けてもらいながら。
そうしてついたのは何時もウィンドウショッピングするだけだったデパート。
「こんな安い既成品咲良には不相応じゃないか」
「そう?十分可愛いけどね。まあ、今はここで我慢してもらおう」
「セシル兄のとこならなんとでもなりそうだけどな?うちだとやっぱりスポーツ関係」
「まあね、デザイン考え中」
兄たちは何やら画策中。
「咲良。気にしないで好きなだけ買うといい。ああ、最低でも20枚ね。さもないともっと増やすよ」
「そんなにもてないよ…」
咲良にとって初めてだ。自分のものを買うなんて。お金の心配はしなくていいらしい。
お兄ちゃんたちが買ってくれるというからそれに甘える。
無論、咲良はまだ兄たちがどんな地位ある人間か知らない。ただ純粋に買い物を楽しんでいる。
見ているだけだったものを今では触れる事が出来る。試着してみてその服のぬくもりに少し涙が出てしまう。
- つづく -