「えーと、君が咲良ちゃんね」
「はい」
そしてとうとうスタッフルームへ入り、その奥の事務所へ。
さらにタバコ臭いし怖い人はいるし。体がこわばる。
「悪いけど君は雇えないよ」
「え?」
だが帰ってきた返事は意外なものだった。
「さらちゃんは俺たちの大事な妹だからね」
「こんな薄汚い店の空気なんて1秒だって吸わせたくない」
「お兄ちゃん……」
店長らしき男の後ろに男が2人。1人はセシル。そして、もう1人の兄明華。
どうやら兄同士で知り合いなようで。もしかしてお友達なんだろうか?
ということも、咲良は知らなかったようで。一緒に居てびっくり。
そんな彼女を連れてさっさと店を出て、すぐに用意されていた車に乗り込む。
無事に出てこれて咲良は安堵して。それで。
「…咲良?」
明華の顔をじーっと見つめる咲良。
「さらちゃん、もしかして明華のことわからない?」
「そんな事はないよね?僕はいつも君を抱っこしてあやしていたんだよ?」
「あ…あすか…にいさま」
「そうだよ!良かった」
「明華にいさま…」
何時も優しくてとびきり美しいお顔の明華兄様。
まさか彼とも会えるなんて。凄い偶然。奇跡?
「咲良、もう大丈夫だよ。僕はもう君に辛い思いなんかさせない」
「でも」
ぎゅっと抱きしめる明華。やはり小さい。
「僕らを信じて欲しいんだ」
「もう、さらちゃんを離したりしないからね」
「…うん」
2人はこの愛らしい妹の頬にそれぞれキスをした。
- つづく -